日本弁護士連合会(日弁連)などが主催し、2日に京都市で開かれる死刑制度をめぐるシンポジウムでパネリストとして参加予定だった、地下鉄サリン事件の遺族の高橋シズヱさん(72)が辞退していたことがわかった。企画について詳しい説明がないまま、日弁連側がチラシなどを作成して周知を始めていたことを知ったためという。
シンポジウムは「死刑、いま命にどう向き合うか」と題され、日弁連と京都弁護士会が主催し、龍谷大で開かれる。映画「三度目の殺人」の上映や、講演「国家が人を殺すとき、死刑を廃止する理由」などが、終日予定されている。
高橋さんによると、昨年11月に関係者の一人から打診され、パネリストを引き受けた。地下鉄事件を起こして死刑が確定したオウム真理教元幹部との面会や、執行への立ち会いを法務省に求めてきた経緯もあり、被害者の思いも単純ではないことや、死刑について考える材料が少なすぎることなど「自分もちゃんと言いたい思いがあった」という。
ところが、シンポ全体の内容や時間配分、他の参加者など企画の詳細を知らされないまま、全容が決定して日弁連のホームページにチラシがアップされていることを、今年1月26日になって知った。「死刑廃止」を訴える内容が大半で、自分で話せる時間はごく短いと知り、3日後に辞退をメールで伝えた。チラシから自分の名前は消えたが、経緯について説明はないという。
高橋さんは2016年には、東京弁護士会主催の死刑に関するシンポに登壇。この時は企画段階から説明を受け、打ち合わせをしながら進めたという。「大きな組織が、しかも死刑がテーマなのにこんなやり方をするのかと、裏切られた思いがした」と語る。
日弁連の担当者は「通常は企画について事前に説明するのだが、今回は連絡の不徹底があった」と言う。(河原理子)