不動産投資で過剰な借り入れに走る個人投資家に対し、金融機関が牽制(けんせい)する動きを強めている。他からの借り入れを隠して複数の金融機関で多額の融資を引き出した投資家に返済を求めるケースも出てきた。スルガ銀行の融資不正などで金融庁も不動産融資の拡大に警戒を強めている。金融機関の姿勢の厳格化が広がれば不動産市況にも影響を与えそうだ。
大手銀行などが問題視しているのは、「1法人1物件スキーム」と呼ばれている手法だ。多くの物件に投資する際、個人では借り入れに限度があるが、投資のたびに別会社を設立し、多額の融資を引き出す。実態は個人なのに多数社への別々の融資に見せかける。
例えば年収1千万円の会社員が複数の物件を買い、すでに数億円の不動産投資ローンを抱えている場合は、新たなローンは組みにくい。しかし投資のたびに合同会社をつくり、物件の買い手や融資の借り手とすれば、金融機関には毎回新たな取引に見える。会社員の融資の全体像は金融機関からは見えにくくなり、一個人への融資としては過剰な額になりかねない。
こうした手法が広がったことを受け、複数の大手行は昨夏以降、合同会社の役員や住所を他の会社と照合するなど調査を徹底し始めた。他行の借り入れ状況も見極め、慎重に審査する方針にカジを切っている。
首都圏の30代男性会社員は、2017年以降の2年間で中古マンションや新築アパートを十数棟購入し、借金は計20億円台半ばに及ぶ。借入先は大手行や地銀、ネット銀、信金など多数で、設立した合同会社は15社超。だが、建築中のアパートに融資する予定の大手行から突然「融資中止」を通告され、今は金策に追われているという。
複数の関係者によると、同様の…