いま読むべきライトノベルは何かと聞かれたら、私は間違いなく『筺底(はこぞこ)のエルピス』(ガガガ文庫)と答える。だが、これはライトノベルなのかと問われれば、黙って首をひねるしかない。登場以来、周到な設定と驚きに満ちた展開で、SF読者を中心に一部の熱い支持を集めてきた。著者のオキシタケヒコとは、いったい何者なのか。 今年1月、約1年半ぶりに6巻が出たシリーズが始まったのは、2014年冬。通常約4カ月ごとに新刊を出すライトノベル業界にあって、このペースは珍しい。次第に厚みを増すことになる物語は、こうして幕を開ける。 東洋では鬼、西洋では悪魔と呼ばれた存在の正体は、異次元からやってくる「殺戮因果連鎖憑依体(さつりくいんがれんさひょういたい)」だった。それは人間に乗り移り、宿主を殺人へと駆り立てる。やっかいなことに、凶行を止めるべく宿主を殺害しても、殺した人間へとすぐさま乗り移ってしまう。しかも、絶え間なく増え続ける鬼により、人類は未来で絶滅する運命にある。 絶望的な物語で主役となるのは、空間を囲んで時間を止める能力「停時フィールド」と、入り口と出口の2点をつなぐ「ワームホール」を使って鬼退治をする組織のメンバーたち。それらをいかにして組み合わせ、危機を乗り越えていくかが主眼となる。 ネタバレを避けるため詳しくは書けないが、これだけの設定から、未来への時間旅行や、過去の「やり直し」ができる展開へと理詰めでたどり着くと言われ、どれだけの人が信じられるだろうか。単なるタイムマシンではない。論理のはしごを上っていくような作劇法のルーツは、意外にも白土三平さんの忍者マンガだったという。 ■ゲーム業界か… |
いま読むべきラノベ 周到な設定、ルーツはあの忍者漫画
新闻录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
相关文章
わかり合えない誰かと生きる ちぐはぐな女性3人の物語
結婚と冒険の不確実性とリスク 「極夜行」角幡さん語る
ゴリラと文学ってそう違わない 小川洋子×山極寿一対談
沖縄をどう詠むか 若手俳人が訪ねた沖縄俳句の生き証人
漱石が語る文学観 作家は「如何に世の中を解釈するか」
「悲しい、悲しいなあ」新源氏主演の元月組トップ
宮本輝さん「田辺先生、古典の教養教えて下さる大教師」
田辺聖子ほど無常を描く作家を、私は知らない 川上弘美
路上で寝れば本買える 金と色狂った末、執念のデビュー
きつい関西弁、解禁したら三島賞 舞台は愛憎渦巻く土地
津原さん「社長発信の影響力、考えて」 幻冬舎の謝罪に
「日本国紀」批判にどう答える 著者の百田尚樹氏に聞く
幻冬舎社長ツイートに批判 「日本国紀」巡り作家と対立
幻冬舎の部数公表「ダメージなし」津原泰水さん一問一答
65万部発行「日本国紀」とは? 盗用疑惑に異例の修正
もしアトムが18歳になったら 黒田征太郎さん創作絵本
村上春樹さん、亡き父の戦争体験つづる 文芸春秋に寄稿
「トリセツ本」不安な夫の救世主? 妻の不倫、相談増加
ドールも登山「ヤベェ」山岳誌、インドア派にもアピール
寂聴さん「世界の名作は不倫」 草食男子、信じられない
造語だらけの小説、でもすらすら読める 奇妙な世界観
「楽しさ突き抜けて」 歌舞伎好き作家が挑む文楽小説
本屋大賞に瀬尾まいこさん「そして、バトンは渡された」
朝井リョウが問う価値と質「肩書が急に直木賞作家に…」
妻のトリセツが説く脳の性差 東大准教授は「根拠薄い」










