近年、大規模な建物に耐震診断を義務づける動きが続いている。実は自分の住んでいるマンションに耐震診断が義務づけられているかもしれない。そこには住民の命を守るだけではない理由があった。
【特集】災害大国 あすへの備え
「耐震診断義務の対象物件に該当しています」
名古屋市東区の分譲マンション「ユニーブル栄」。昨年2月、管理組合の水谷洋一副理事長(70)は市耐震化支援室の担当者に耐震診断を受けるよう促された。
マンションが面する市道堀田高岳線(空港線)は、災害時に救助や避難、支援物資の輸送などで重要な役割を担う「緊急輸送道路」に指定されている。万一、マンションが崩れて道を塞ぐと、救急車や消防車などが通れなくなってしまう。
2013年に改正された耐震改修促進法で、自治体が緊急輸送道路沿いの建物に耐震診断を義務づけられるようになった。愛知県は14年3月、国道1号など50路線(計873キロ)を義務づけ路線に指定した。
耐震診断が義務になった建物は、新耐震基準が施行された1981年以前に建てられ、倒壊すれば緊急輸送道路の道幅半分を塞ぐ恐れがあるもの。マンションは築41年の12階建てで、診断対象だった。
水谷さんは管理組合総会で国と自治体で費用を全額補助することなどを説明。昨年3月から民間業者と話し合い、診断に着手した。その結果、6階以上の多くの場所で耐震性が不足しているとの数値が出た。
ただ、管理組合は当面、耐震工事をしない方針だ。老朽化で給排水管の水漏れが目立ち、23年ごろに全面的な改修工事を予定している。1億5千万円ほどと見込む耐震工事に資金を回す余裕はないという。
水谷さんは「耐震工事への公的補助は一部しか出ず、今さら億単位のお金を負担して工事を希望する住民はいない」と話す。
■診断結果は公表、改…