地震による地盤の被害に地滑りや液状化がある。住宅被害に加え、その後の再建の大きな障害になる。事前対策は容易ではないうえ、そもそも住む場所の危険を確かめる動きも弱い。
【特集】災害大国 被害に学ぶ
「家を買った時には、こんな苦労は想像もしていなかった」
2011年の東日本大震災で、大規模な地滑りが起きた仙台市青葉区の折立5丁目団地。住民の庄子敏子さん(73)は振り返る。
敷地が最大15センチ沈下し、床が大きく傾いた。地盤のかさ上げと木造2階建ての自宅の建て直しを余儀なくされた。同居する息子家族が2千万円近くかけて再建した時には震災から4年過ぎていた。
折立団地は、1965年から72年にかけ、丘陵地の谷間を盛り土するなどして造成された。5丁目では2・5ヘクタールの地盤が最大2メートルずり落ち、約50世帯の住宅が被害にあった。
市の復興工事は住宅ごとではなく5丁目全体の事業になった。地盤を補強して現地再建するか、集団移転か。市が方針を決めるだけでも1年かかった。
庄子さんは「工事が終わっても、高齢でローンが組めずに土地を手放した住民もいた。どういう危険がある土地か、事前に少しでも知っておくべきだった」。
調査進まず、事前対策も全国で1例のみ
大規模な盛り土造成地の地滑りは、阪神大震災(95年)や中越地震(04年)でも起きている。被害が多いのは、高度経済成長期の造成だ。
国土交通省は06年から自治体…