製薬大手エーザイ(東京)の部長だった男性(当時50)が自殺したことについて、天満労働基準監督署(大阪)は、部長昇進にともなう長時間労働などによる強いストレスがあったとして労災の認定をした。2月18日付。遺族らへの取材でわかった。
遺族側代理人の稗田隆史弁護士らによると、男性は2008年4月に部長に昇進。同年8月ごろにうつ病になり、その後8年間にわたり月平均約80時間以上の時間外労働をした。うち100時間超になった月が計21回、休日出勤は移動日も含め計367日あったという。
また、残業代支払いの対象外となる労働基準法上の「管理監督者」として扱われ、同社の労働時間の管理が不十分だったという。男性は16年9月に単身赴任先のマンションで死亡した。
遺族は昨年6月に労災を申請。労基署は、昇進で業務内容や量が大きく変わったところに、恒常的な長時間労働があり、業務による強いストレスが発病の原因になったと認定したという。
エーザイによると、遺族と面会するまで、男性のうつ病の発症を把握していなかった。担当者は「極めて厳粛に受け止めている。これまで長時間労働の是正を進めてきたが、より一層徹底する」としている。
男性の妻(52)は「健康を守る製薬会社として、長時間労働は精神に障害をきたす危険があると認識できたはずなのに、夫の死を防げなかった。夫と同じような働き方をしている人は多く、会社も社会も働き方を変え、夫の死を無駄にしないで欲しい」と話した。