東京入国管理局(東京都港区)の収容場で長期収容されているクルド人男性が12日夜に体調を崩し、家族が救急車を呼んだものの、二度にわたり救急搬送されなかったことがわかった。弁護士によると、男性の訴えに入管職員は「息消えたら(病院に)連れて行きます。あなたは私よりも元気だ」などと答えたという。13日の検査後も病状は回復しておらず、家族や支援者が心配を募らせている。
男性はトルコ出身のクルド人で、2004年に来日したチョラク・メメットさん(38)。在留資格の延長が認められず、18年1月から約1年2カ月間収容されている。
12日に面会した妻のヤセミンさん(36)に、机に突っ伏して「頭が痛くて、息苦しい」と話したため、家族らが「こんなことは初めてだから」と病院での診察を入管に訴えた。聞き入れられず、午後8時以降は収容者とは電話もできないため、夜になってチョラクさんのために二度、救急車を呼んだ。しかし搬送されず、事態を知って集まった数十人の支援者らが搬送するよう入管に求め続けたという。
13日午後になってから病院に連れて行かれ、診察後に入管で面会した東城輝夫弁護士によると、脳のMRIや血液検査を受けたという。「脱水症状と言われたようだが、車いすに乗り、突っ伏したまま署名もできないほど衰弱している」と話す。この日、収容のあり方を問う弁護士らが「入管は収容者の健康管理に責任を負えていない」として解放を求める緊急共同声明を出した。
東京入管総務課は「入管内の准看護師が救急隊員に病状を説明し、隊員の判断で搬送されなかった」と説明している。その際、救急隊員は二度とも本人には会わずに引き返したという。
入管では14年、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で体調不良を訴えたカメルーン人男性が救急車を呼ばれることなく死亡した例があり、遺族が国家賠償を求め提訴している。(鬼室黎)