名古屋拘置所に収容中の男性死刑囚(69)が、拘置所の許可を得ずに戯曲「ハムレット」の一節を便箋(びんせん)の台紙に書いたところ、廃棄を指導されたことなどをめぐり、国に60万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が18日、最高裁第一小法廷であった。小池裕裁判長は、指導の一部を「過度な制約」と認めた二審判決を破棄し、死刑囚の請求を全面的に退けた。死刑囚の逆転敗訴が確定した。
同拘置所は収容者の「順守事項」として、便箋とノート以外の用紙への書き込みや、物品の加工を許可なく行うことを禁止している。第一小法廷は「規律や秩序を適正に維持するため、必要かつ合理的な範囲にとどまる」規定だと指摘し、これを守らなかった死刑囚への指導は適法だと結論づけた。
原告は、三重県四日市市で2人を殺害し、強盗殺人などの罪で死刑が確定した山口益生死刑囚(69)。拘置所は、許可なく①便箋の台紙にシェークスピアの悲劇ハムレットの名文句「To be, or not to be」(生きるべきか、死ぬべきか)を記載②半分に切った封筒で切手を保管③弁護士から届いた封筒にメモ――などの五つの行為を不正とみなし、廃棄などを指導した。
一審・名古屋地裁は、拘置所の対応に「裁量の乱用はない」として請求を退けた。二審・名古屋高裁は「一般社会でも通常行われる」行為まで一律に禁止するのは「過度な制約」だと判断し、①②などについては、拘置所の対応が違法だとして、8万円の賠償を命じていた。
■ちり紙でサイコロ、ご飯粒で袋…