台湾から訪中している野党国民党の高雄市長、韓国瑜(ハンクオユイ)氏を中国が異例の厚遇で迎えている。25日には政府の対台湾政策部門のトップが韓氏と面会。高雄の農産品などを43億台湾ドル(約150億円)購入する契約を交わした。台湾の蔡英文(ツァイインウェン)政権の頭越しに親中派首長との関係を強め、蔡氏を交渉相手と見なさない姿勢を打ち出している。
韓氏は22日に香港入りし、28日まで広東省深セン、福建省アモイなどを巡る。初日に香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が韓氏と会談。25日には中国政府の国務院台湾事務弁公室(国台弁)の劉結一主任(閣僚級)が、北京から深センまで出向き、韓氏に「両岸(中台)の融合発展」を呼びかけた。
韓氏は昨年の統一地方選で、蔡政権下で悪化した中台関係を改善させ、経済振興を図ると訴えて当選。国民党が与党民進党を破って大勝する原動力となった。
厚遇の背景には、2016年の発足以来、台湾は中国の一部であるという中国が主張する原則を受け入れない蔡政権に見切りをつけ、経済力で野党や世論を取り込もうとする中国の狙いがある。国台弁の劉主任は今月の全国人民代表大会(全人代)の際、蔡政権を念頭に「台湾独立分子はごく少数。両岸同胞の敵だ」と批判した。
台湾では来年1月に次期総統選が予定され、再選を目指す蔡氏や民進党は苦戦が予想されている。国民党側には韓氏を総統候補に担ぐ声もある。(深セン=西本秀)