大リーグ、マリナーズのディー・ゴードン内野手(30)が28日(日本時間29日)、地元紙「シアトルタイムズ」に、21日に行われた今季開幕第2戦(東京ドーム)で、イチロー選手と抱擁した写真を大きく使った全面広告を掲載した。「THANK YOU ICHIRO」の見出しで、引退を表明したイチロー選手への惜別の思いをつづった。ゴードン内野手は、イチロー選手とマーリンズ時代からのチームメート。21日の試合でイチロー選手が交代する際には、二塁の定位置でその姿を見つめながら、涙を流した。
大リーグでは、球団を去る選手が地元紙に広告を載せて、ファンにメッセージを送る習慣がある。ダルビッシュ有投手も2017年年、レンジャーズからドジャースに移籍する際、テキサス州の地元紙に感謝の広告を載せた。ただ、引退する選手に対し、別の選手が惜別の広告を出すのは異例。
メッセージ全文は以下の通り。
親愛なるイチローへ
まず最初に。私の偉大で、お気に入りの友だちでいてくれてありがとう。
私が野球を始める前、「自分みたいに痩せた選手がいるんだ。だったら自分も出来るはず!」と思いながら、あなたを見ていたことを覚えています。あなたは、私が野球を始めるきっかけを作ってくれました。
あなたは、エイボン・パーク(米フロリダ州、ゴードン選手の出身地)に住む少年のアイドルでした。野球のテレビゲームの選手に、あなたの名前をつけたこともありました。
2004年、ヒューストンで開催された球宴で初めてあなたと会いました。午後3時ごろ、父とグラウンドに出たら、あなたはすでにウォームアップをしていましたね。球宴なのにですよ!?そんな選手、あなた以外にいませんでした。
パワーヒッター全盛期のなか、あなたは自身の信念、そしてなにより、あなたを作り上げた文化に忠実でした。他の選手より、身体が小さくても、なんだって出来る!あなたは、そう教えてくれました。
そして2012年。ドジャース(ゴードン選手が過去に所属)がシアトルに遠征したときのこと。私は遊撃のポジションから、あなたの動きをずっと見ていました。あなたの通算安打の積み上げにも貢献しましたよね。あなたに夢中になって守備に集中できなかったのです(ドジャースのみなさん、ごめんなさい。でもイチローだもん。わかるよね?)。
翌日、あなたはヤンキースに移籍してしまいました。ショックでした。でも2015年、私がマーリンズに加入すると、数日後、あなたもやってきたのです!
興奮しました。「イチローと一緒に野球ができるなんて、マジかよ?俺が?」と。あなたに会いたくて、ジュピター(フロリダ州、マーリンズの春季キャンプ地)に予定より早く向かいました。あなたにドキドキしながらあいさつすると、「君の助けになるよ」と言ってくれましたよね。嬉しかったです。「オレは“イチ”と一緒にプレーしたんだぜ!エイボン・パーク出身のオレがだよ??」。私の自慢です。
この5年、あなたの存在が私にとってどれだけ大きかったのか、みんな分かっていません。イチ。これまで、私の人生にはうれしいこと悲しいこと…いろいろなことがありました。でも、あなたの友情はまったく揺らがなかった。いつだって私のそばにいてくれた。私が不当な扱いを受けたときだってね。
あなたへお礼を伝えるのに、ツイッターやインスタグラムは適していないと思いました。だから、わたしはこういう形(新聞広告)であなたへの気持ちを表現しました。あなたの友情、教えがなかったら、そしてあなたが“秘密”を教えてくれなかったら(誰にも言わないよ)、いまのディー・ゴードンは存在しません。
愛しているよ、ブラザー! あなたはいつまでも、私の人生の一部です。これからもオフの日は、私と一緒に打撃練習をしてくださいね。それが出来なくなることは、さびしいから。あなたを頼ることが出来なくなることも。
あなたのブラザー
ディー・ゴードン
(シアトル=井上翔太)
イチローが残した言葉たち