中国・四川省で3月に起きた山火事で殉職した消防隊員ら30人の追悼式が4日、同省で執り行われた。政府や国営メディアは、戦争の犠牲者らと同じ「烈士」と呼んで隊員らを称賛。だがインターネット上では、「英雄視するのではなく、消火作業の問題点を検証すべきだ」との議論が市民らの間で起きている。
山火事は3月30日に発生した。強風で激しく炎上し、130ヘクタール以上が焼失。消火に当たった消防士30人が現場で死亡した。ほとんどが10代と20代の若者だった。地元政府は30人に「烈士」の称号を与え、国営中央テレビは4日の追悼式を生中継。習近平(シーチンピン)国家主席が捧げた花輪も映し、「祖国に身を捧げた人たちを忘れない」とたたえた。
だが、報道で当時の状況が明らかになるにつれ、隊員らが十分な休息なしに働き続けていたとの指摘や、作業にヘリをもっと活用すべきだったとの批判がSNS上で相次いだ。隊員らの装備や訓練、上司の指揮に問題はなかったかを検証すべきだとの声も上がった。
専門家からも「社会が遅れているほど、勇敢さが強調される。『勇敢文化』を反省すべき時だ」「樹木はまた生えるが、人は生き返らない。消火よりも、隊員の安全を優先すべきだ」との指摘が出ている。
一方、中国メディアによると、当局は「英雄を侮辱した」などとして、10人以上を拘束したという。(北京=延与光貞)