高校野球の春季大阪府大会で14日、今春の選抜大会に出場した履正社が、1回戦の星稜(石川)戦以来となる公式戦に臨んだ。優勝候補と目されながら世代屈指の右腕、奥川恭伸(3年)に3安打完封を許して敗退してから、約3週間。1回戦で三島を9―2(七回コールド)で下したが、改めて課題を痛感する一戦となった。
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三島の先発投手は直球が150キロを超える奥川のような速球はない。ただ、チェンジアップもスライダーも大きく動き、直球との緩急が際立つ。それを丁寧に低めに集める、典型的な変化球投手だった。
履正社打線は苦しんだ。2点を先行され、追う一回2死。3番小深田大地(2年)が直球を引っ張り、右越えソロ本塁打。反撃開始、と思いきや、上位打線は打ち気にはやって変化球に泳がされる。小深田も2、3打席は変化球をひっかけて、いずれも右方向への内野ゴロに倒れた。
昨秋から、履正社の課題は「対応力」だった。長打のある打者はそろっている。ただ、「1打席目が2打席目に、2打席目が3打席目に生きてこない選手が多い」と岡田龍生監督。個々の打力の高さは認める一方で、打線として相手を攻略していく姿勢に物足りなさを感じてきた。
その懸念は、甲子園でも浮き彫りになった。奥川対策として150キロ近い直球を打撃マシンで打ち込み、力勝負を挑んだ。しかし、変化球をうまく織り交ぜられて的を絞れず、17三振。零封負けを喫した。
この日は、黙ったままではなかった。攻略したのは下位打線から。低い変化球は、見逃せばボールになる。1点をとって同点にした二回、2点を勝ち越した四回、5点を奪った六回はいずれも、6番以降が2四球ずつを選び、打線をつないだ。六回には小深田がようやく変化球をとらえ、逆方向の左中間へ2点二塁打を運んだ。
試合後、6番を打った主将の野口海音(みのん)(3年)は渋い顔だった。「イニング間に『割り切って、低めを捨てよう』と言っても、まだ振る打者がいた。対応力のなさ。全然、甘いです」。岡田監督もうなずく。「技術がある程度あるなら、(力を)上乗せするには頭を使うしかない」
履正社が求める「強打」とは、バットを強く振り回してホームランを打つことではない。打者全員が相手を攻略するための工夫を繰り返す。そんな打線を夏までに作っていく。(小俣勇貴)