パリ中心部にある世界的な観光名所、ノートルダム大聖堂で15日に発生した火災は、出火から4時間後の同日午後11時(日本時間16日午前6時)を過ぎても燃え続けていた。改修工事が行われていた足場周辺からは断続的に火の粉が上がり、大聖堂は白い煙に覆われていた。大聖堂の中からは時折、懐中電灯の光が見え、消防隊員による消火活動が聖堂内部でも行われていることをうかがわせた。
ノートルダム大聖堂で火災 93mの塔が焼け落ちる
パリ市民の間には悲しみが広がった。大聖堂周辺は安全のため、人が近づかないように、広く非常線が張られていた。深夜にもかかわらず、非常線の外側には多くの人が大聖堂を取り囲むように集まり、消火活動を見守った。消防車が近くを通ると、歓声が起こり、鎮火への期待を示した。
集まった人々は、大聖堂を向きながら、声を合わせ聖歌を歌っていた。祈るように手を前で組み、涙を流す人の姿もあった。
パリの大学生のエティエンヌ・コンピョンさん(23)は「長い年月をかけて作られ、過去の暗い歴史にも耐えてきたノートルダム大聖堂は、私たちの文明のシンボル。燃えているのを見ると、痛みを感じる」と話した。
毎朝、大聖堂を見ながら原付きバイクで通勤しているというアドリオン・ベルナードさん(29)は「大聖堂に別れを告げなければならなくなるかもしれないと思い、見にきた。たとえ再建されたとしても、もう以前の大聖堂ではないから」と悲しんだ。ローマヌさん(25)は「何百年も存在していたものでも、一夜にしてなくなってしまう可能性がある。大聖堂は永遠にここにあるものだと思っていた、自分は間違っていた」と目に涙を浮かべていた。(パリ=津阪直樹)