ヨーロッパ総局長・石合力
「鉄の女」サッチャー元英首相は首相在任中の1988年、ベルギーの古都ブリュージュで、英国と欧州の関係についてこう語ったことがある。「(統合という)ユートピア的目標に惑わされることなく、次の段階を決めていく必要がある。ユートピアは決して来ないのだから」
主権国家の連合体としての欧州にこだわり、統合の過度の進展に異を唱え続けた。ジョンソン前外相ら保守党内の欧州懐疑派の育ての親とも言われる。
2016年の国民投票後、彼女に次いで英国で2人目の女性宰相になったメイ氏。就任前は欧州連合(EU)残留派だったが、離脱派に転じ、「統合欧州」ではなく「離脱後の英国」をまるでユートピアのように語った。「グローバルで繁栄する英国になる」。EUの「単一市場」「関税同盟」からの離脱も明言した。
約3年間の議論を経て、見えて…