国産初のジェット旅客機MRJを開発する三菱航空機(愛知県豊山町)の水谷久和社長は16日、機体の設計変更を6月末までに完了させる考えを示した。当初の見通しより作業が複雑で時間がかかっていたが、完成のめどがたったという。新たな試験機をつくって米国での飛行試験に臨む予定だ。
この日、名古屋市内で記者会見を開いて明らかにした。
設計の変更は、安全性を高めるために計器類や電線の配置を改めるもので、当初は2017年秋に終える見通しだった。しかし、電線の配置を見直す作業が複雑で手間取った。そのため、同時進行で試験機も製造してきた。水谷氏は新しい試験機について、「なんとか早く完成させて飛行試験につなげたい。第2四半期(4~6月)あたりに試験に組み込むことになりそうだ」と述べた。
MRJは08年に三菱重工業が開発を始めたものの、作業が難航。13年を予定していた初号機の引き渡し時期は5度延期され、現在は20年半ばを目指している。今年3月からは、国土交通省が安全性を証明する「型式証明」を得るための飛行試験を米国で受けている。ただ、これは設計変更を行う前の試験機。型式証明を取得するには、設計変更後の機体を使う必要がある。そのため、三菱航空機は新たな試験機をつくり、安全性が確認でき次第、米国に持ち込む。(初見翔)
MRJ開発の経緯
2008年3月 事業化を決定
09年9月 設計変更で納入延期【1回目】
12年4月 検査態勢の不備で納入延期【2回目】
13年8月 部品の仕様変更に手間取り納入延期【3回目】
15年11月 初飛行
12月 ソフトウェア改修などで納入延期【4回目】
16年10月 米国で飛行試験を開始
17年1月 設計変更で納入延期【5回目】
18年3月 三菱航空機が約1100億円の債務超過に
12月 三菱航空機、債務超過を解消
20年半ば 初号機を全日空に納入予定
22年 小型モデルを投入へ