アイヌ民族を「先住民族」と初めて明記したアイヌ新法が19日、参院本会議で採決され、賛成多数で成立した。アイヌ文化振興法に代わるもので、差別の禁止を定め、観光や産業の振興を支援する新たな交付金制度の創設などが盛り込まれている。
新法は、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を目的に掲げ、伝統的な漁法への規制の緩和なども盛り込んだ。先住民族への配慮を求める国際的な要請の高まりも背景にある。
石井啓一国土交通相は19日の閣議後会見で「アイヌの人々が民族としての名誉と尊厳を保持し、これを次世代に継承していくことは多様な価値観が共生し、活力ある共生社会を実現するために重要だ」と述べ、新法の意義を強調した。
18日の参院国土交通委員会では「近代化の過程で多くのアイヌの人々が苦難を受けたという歴史的事実を厳粛に受け止める」ことなどを盛り込んだ付帯決議が、全会一致で採択された。(松山尚幹)