原爆犠牲者の遺品など約2万点の資料を収蔵する広島市の広島平和記念資料館(原爆資料館)が本館のリニューアルを終え、25日、約4年半ぶりに全面オープンする。現実にあった苦しみに向き合ってほしいと、実物展示に重点を置く一方、説明文は極力抑えた。
被爆者は今、核兵器と人類の関係は…核といのちを考える
託した「家族が生きていた証し」 8月6日を伝える時計
資料館は1955年開館の本館と94年開館の東館で構成。東館は2017年4月、展示の更新を終え、公開されている。
メインとなる本館には二つのゾーンを配置。「8月6日のヒロシマ」ゾーンには爆風で曲がった鉄骨や煙突などの資料、犠牲になった学徒が身につけていた衣服などを展示した。「被爆者」ゾーンには、被爆死した幼児の三輪車などの遺品や犠牲者の日記や手紙、遺影や遺族の手記を並べた。
それぞれの被爆者や遺族の苦しみに向き合ってもらいたいと、説明パネルなどは最小限にとどめた。実物での展示を重要視し、以前あった3体の「被爆再現人形」は撤去した。
来館者は東館でジオラマに動画を投影して被爆前後の姿を再現する「ホワイトパノラマ」を見た後、本館へ。被爆の実相を示す展示に進み、東館に戻って原爆開発の歴史や核時代の現状などを学ぶ。東館では17年7月に122カ国の賛成で国連で採択された核兵器禁止条約も紹介、批准国数や国名も掲示する。
18年度の入館者数は豪雨災害の影響などで前年度比9・4%減の152万2453人で、過去6番目に多かった。外国人の入館者は43万4838人で、6年連続で過去最多を更新した。
18年3月末の厚生労働省のまとめによると、被爆者健康手帳を持つ人は15万4859人、平均年齢は82歳を超えた。被爆者が高齢化するなか、広島市は被爆の実相と核兵器の非人道性をよりわかりやすく伝える展示のあり方について議論を重ねてきた。
本館下の耐震工事が10月末まで予定され、仮囲いの設置は続く。(宮崎園子)