JR門司港駅(北九州市門司区)のみどりの窓口に、小さな紙人形が並ぶ。駅舎が大正時代の姿に戻った今年3月から飾られている。作ったのは地元出身で、駅舎とほぼ「同級生」の女性。その分身たちが1世紀の時を超え、ふるさとに帰ってきた。
作者は2006年に93歳で亡くなった武藤正子さん。駅が建てられた前年の1913(大正2)年に現在の門司区で生まれた。
駅では、「豆紙人形」と名付けた数センチのほどの作品がケースに25点収められて展示されている。竹馬、通りゃんせ、鞠(まり)つき、子守……。正子さんが門司で過ごした幼き日の、懐かしい情景と昔遊びの様子を千代紙や綿棒で形にした。素朴で温かな味わいで、和の「門司港レトロ」を体現しているようだ。
山口県下関市の女学校を卒業後、正子さんは門司を離れた。夫が亡くなった後、学生時代に好きだった絵を70歳で習い始め、78歳でパステル画の個展を開いた。豆紙人形づくりは88歳から。目が見えなくなってくる中、指の感覚を助けに約300点をつくった。
次女で作家のヒロコ・ムトーさ…