世界貿易機関(WTO)は26日、東京電力福島第一原発事故の被災地などからの水産物をめぐり、韓国による全面禁輸を事実上容認した上級委員会の報告書について、紛争解決機関の会合で正式に採択する。日本は抗議する考えだが、報告書は確定する見通しだ。
日本政府はスイス・ジュネーブの本部で開く会合で、上級委が韓国の禁輸措置の是非について判断せず、本来の目的である紛争の解決に資する判断をしなかった、と意見表明する方針。だが、加盟国が全会一致で反対しない限り可決される仕組みとなっており、採択を阻むのは困難な状況だ。WTOの紛争処理は二審制のため、日本が「敗訴」した第二審にあたる上級委員会の報告書がそのまま確定することになる。
この問題をめぐっては、安倍晋三首相が25日、訪問先のベルギー・ブリュッセルでの記者会見で、WTOについて「時代の変化に追いついていない。上級審のあり方にも様々な課題がある」と不満を表明。さらに、「議論を避ける形での結論が出たり、結論が出るために時間がかかりすぎたりする」とも語り、WTO改革の必要性を訴えていた。(ジュネーブ=和気真也、ブリュッセル=別宮潤一)