安倍晋三首相は28日午前、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)のため訪日したトランプ米大統領と大阪市内で会談した。トランプ氏は日米の貿易問題を重視する姿勢を鮮明にした。一方日本政府によると、日米安全保障条約が不平等だとトランプ氏が不満を表明していることについて、会談で米側から説明はなく、日本側も議題にしなかったという。
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安倍首相は会談の冒頭、「短期間に頻繁に首脳の往来があることは、強固な日米同盟の証しだ。世界経済の持続的成長など、国際社会が直面する課題解決への貢献を通じて力強いメッセージを出していきたい。日米の協力なくしてこうした取り組みは実現できない」と語った。一方、会談冒頭でトランプ氏はミシガン州やオハイオ州などの州名を挙げ、日本の自動車メーカーなどの対米投資に謝意を示したうえで、「我々は貿易問題や軍事、武器について協議する」と話した。
また、トランプ氏は日米首脳会談の後に開かれた米印首脳会談の冒頭で、日米貿易交渉について「いくつか非常に大きな案件を発表できるだろう」と述べた。
日米首脳会談後の両政府の説明によると、両首脳は北朝鮮とイランを含む安全保障上の共通の脅威について連携して関与することを確認。「日米同盟の技術的優位を維持するための対策を講じる」ことも合意した。中国の知的財産侵害や、通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)などに対する政策協調を指している可能性がある。
地球規模で日米同盟の協力を深化、拡大することや日米間の貿易協議についても議論した。
トランプ氏は最近、米国の同盟国に対し、貿易問題と安全保障問題をリンクさせ、「米国の負担が大きく不公平」という批判を強めている。27日夜は豪州のモリソン首相との会談の冒頭で、「我々が同盟国の面倒をみている」と強調。「私は同盟国との間の巨額の貿易赤字を引き継ぎ、我々は同盟国の軍隊を手助けさえしている」と批判した。
訪日直前の26日には、米FOXビジネスネットワークのインタビューで、「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。でも我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。彼らができるのは攻撃をソニーのテレビで見ることだ」と語り、日米安全保障条約は不平等だと不満を表明している。
日本政府によると、こうしたトランプ氏の考えについて米側から言及はなく、日本側も真意を確認しなかったという。西村康稔官房副長官は記者団に「日米安保条約を前提とする日米同盟がアジア太平洋地域の平和と安定、繁栄、自由の基礎だ。常日頃から緊密に連絡を取り合っており、あえてそういうことをする必要もない」と話した。
日米首脳による会談は、4月の首相訪米時と5月のトランプ氏訪日時に続き、3カ月連続となった。会談は約45分間で、河野太郎外相や麻生太郎財務相、ポンペオ国務長官らが同席した。(園田耕司、青山直篤、別宮潤一)