内閣府は26日、企業が主に従業員向けに設置する「企業主導型保育所」の2016~17年度の運営状況に関する検証結果を発表した。国の助成が決まった施設の約1割の252施設が保育事業を取りやめ、このうち214施設は開所にも至らなかった。企業主導型保育所をめぐっては定員割れや休園などの問題が相次いでおり、審査や指導監査の甘さが改めて浮き彫りになった。
政府は待機児童対策の切り札として16年度に企業主導型保育所を導入した。認可外施設だが、職員配置や施設基準を満たせば施設整備費の4分の3や運営費を助成する。17年度末までに2736施設への助成を決定した。
内閣府の検証結果によると、252施設が保育事業を取りやめた理由は「児童数を確保できなかった」(34施設)、「土地の取得や賃貸が困難になった」(12施設)など。110施設については「申請者の都合」としか分かっていない。57施設にはすでに助成金が払われ、このうち7施設からは返還されていないという。
事業譲渡は44施設、助成取り消しは2施設、16年度に助成を決定したのにいまだに開所していないのは4施設だった。1施設を運営していた1法人が破産、9施設運営の2法人が民事再生手続きを申請していた。
現在の施設整備費助成は新設を前提に、施設規模に応じて7580万~1億8130万円。改修の場合の助成区分が設けられておらず、改修だった15施設も上限額を受け取っていた。
内閣府はこの日、改善策を発表。改修費を水増しして申請する施設を審査段階で除外するため、改修の場合の上限を新たに設定する。夏までに今より低い具体的な上限額を設定するとともに、審査方法の厳格化も図る。助成の可否の審査や指導監査する機関も、改めて公募する。現在は公益財団法人「児童育成協会」が担っている。
改修費の水増し申請が疑われる事例は、国会で野党議員も指摘。内閣府の資料や関係者によると、神奈川県内の企業主導型保育所は17年度に100平方メートル強の改修工事を行い、約5300万円の助成を受けた。業者によると、この規模の改修費の相場は2500万~3千万円程度という。
内閣府幹部は取材に対し、「書類がそろっていれば、審査は通る状態だった」と審査の甘さを認める。「企業主導型保育所が導入された16年は『保育園落ちた日本死ね!!!』のブログで待機児童問題が注目され、受け皿の拡充を最優先してしまった」とも打ち明ける。(西村圭史)