高校野球の春季兵庫県大会は4日、決勝が明石トーカロ球場であり、神戸国際大付が須磨翔風を5―2で下して近畿地区大会への出場権を手にした。公立校の須磨翔風は初めての決勝で、終盤に競り負けた。
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わずか数センチの差で、初優勝に手が届いたかもしれなかった。1点リードの八回2死満塁、白球が投手のグラブをかすめ、中前へ抜けていく。須磨翔風のエース北村聡汰(3年)は悔しさを押し殺して本塁後方のカバーに向かった。「あと少しグラブを上げていれば」。投直にできると思った打球が、逆転を許す2点適時打となった。
この回、3失点。流れは失った。なのに、ベンチに戻る北村を出迎えた控え選手は底抜けに明るかった。円陣のなかで北村に笑顔が戻る。中尾修監督は、座ったままだった。「いい雰囲気なときは、子どもに任せたほうがいい。余分な話をする必要はない」。敗れても、穏やかな表情で選手を見守っていた。
2009年に神戸市立の須磨と神戸西が再編・統合して生まれた公立校だ。平日は授業が7コマあり、練習時間は夕方の3時間程度に限られている。それでも、中尾監督らの選手の主体性を重んじる指導によって、強化は進んだ。2016年秋には、エースの才木浩人がプロ野球の阪神からドラフト3位で指名された。北村の進学理由も、「強いところで野球をしたかったから」だ。
開校から10年。この春、県の地区大会で神戸国際大付を下すと、県大会の3回戦では選抜4強の明石商に3―2で競り勝った。北村は「翔風でも強豪を倒せる。自信になりました」と言う。中尾監督もうなずく。「選手たちが歴史を作ってくれた。あとは、この悔しさを夏にぶつけたい」(小俣勇貴)