東京・池袋で高齢者が運転する車が暴走し、母子2人が死亡、10人が重軽傷を負った事故で、車が時速90キロ台後半まで急加速していたことが捜査関係者への取材でわかった。車に異常は確認されず、警視庁は運転ミスとの見方を強め、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで捜査している。
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事故は4月19日午後0時25分ごろ、東京都豊島区東池袋4丁目の都道で発生。旧通産省工業技術院の飯塚幸三・元院長(87)の乗用車が道路左側の縁石に接触した後、約150メートル暴走して二つの交差点に赤信号で進入。通行人らを次々にはねるなどし、自転車の松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が亡くなった。元院長と同乗の妻も負傷した。
警視庁は、元院長が胸の骨折などのけがを負い、事故後に入院したため逮捕していない。元院長宅の捜索などを通じて証拠を集めるとともに、容体を見ながら今月13日以降、複数回話を聴いた。証拠隠滅や逃亡の恐れもないなどとして、退院後も在宅で捜査する方針で、現場の実況見分も予定しているという。
捜査関係者によると、元院長の車のドライブレコーダーや現場周辺の防犯カメラの映像の分析から、車は急に速度を上げ、最高で規制速度(時速50キロ)を超えて90キロ台後半まで達していたことが判明。メーカー立ち会いによる検査の結果、アクセルやブレーキに異常がなかったこともわかった。
元院長は2017年の免許更新の際、75歳以上に義務付けられている認知機能検査で「機能低下の恐れなし」と判定され、ゴールド免許を保有。一方、事故当時は両足を痛めて通院中で、医師から運転を控えるよう言われていたという。
調べの中で、元院長は「被害者には大変申し訳ない」と謝罪。「アクセルが戻らなかった。ブレーキを踏んでも利かなかった」とも説明したという。同庁は、車が縁石に接触してパニックに陥り、ブレーキと間違ってアクセルを踏み続けた疑いが強いとみて、当時の状況を詳しく調べる。
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