新学期が始まって1カ月半。この時期は、子どもが学校に行きたがらなくなることがあります。我が子がそうなった時、「学校に行かなくても大丈夫」と言われても、代わりの学びの場が用意されているわけではありません。学校に通う以外の教育の形が社会的に知られていないことや、フリースクールなど受け入れる場の地域偏在が激しく、選択肢は少ないのが実情です。子どもが居場所を失ったことへの不安は、親をも追い詰めてゆきます。
子も自分も夫も責めた
神奈川県藤沢市の女性(41)の小学5年生の息子は、今年の年明けから学校を休みがちになった。環境の変化が苦手なタイプ。春が近づくにつれて欠席は増えていった。「今日は行けるかも」「やっぱり行けなかった」。一喜一憂を繰り返した。
「私、いつまで同じことを繰り返すんだろう」
綱渡りのように学校に通ってきたが、自分も子どもも、消耗し続けていた。
集団が苦手で、「行き渋り」は幼稚園から。最初に学校に行けなくなったのは、2年生の夏休み明け。誰かに理由を尋ねられるのが嫌で、親子で家にこもった。「社会から取り残されたようだった」
「学校なんて行かなくていいから、受け入れてやれ」と言う夫が無責任に感じられた。親類や友人からの「過保護」「愛情不足」という言葉はもちろん、「大丈夫」「寄り添ってあげて」という励ましにも、追い詰められる思いがした。息子に怒りの矛先が向き、「なんでみんなと同じことができないの」「学校なんて、やめちまえ」と怒鳴り、自己嫌悪に陥った。
「自分を責め、子どもを責め、夫を責め、周囲の人も責めていた」
1カ月半ほど休んだ後、息子はなんとか学校に通えるように。
しかし、自分はうつ状態になり、家事もままならない不安定な精神状態が続いた。でも、「学校に行く」という目標のために、校長との面談や担任との情報共有などは続けた。だが、疲れきって倒れ込むように帰宅する息子の姿を見るたびに、「これでいいんだろうか」と疑問を抱いた。
息子は今年度、まだ一度も学校に通っていない。春休み前に通えそうなフリースクールを見つけたが、学校に通えないことで自信を失った息子は、外出もままならない状態だ。自分はようやく「学校でなくてもいい」と思えるようになったが、「本人がそう思えるまでは時間がかかりそう」。それまで家族だけで支えなければならないことを思うと、孤独だ。
「やっとつながれるコミュニティーができた」
東京都の赤沼美里さん(42)は、小学校入学後すぐに不登校になった息子がその夏、見学したフリースクールに「通いたい」と言った時、心底ほっとした。通い始めてからも「学校に行かなくて本当に大丈夫か」と不安だったが、不登校でも社会に出ている人がたくさんいると知り、安心できた。
「同じように居場所がなくて困っている親子を笑顔にしたい」と、1年前、都内にフリースクールを開設した。子どもたちの気持ちによりそい、親の悩みも共有できるような対話を大切にしている。子どもが「通いたい」と思ってやってくるようになると、親の表情も一気に明るくなると感じる。「子どもが安心できる居場所があることが、親にとって最大の救いになるはずです」
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