28日午前7時40分ごろ、川崎市多摩区登戸(のぼりと)新町の路上で、男が登校中の小学生らを刃物で次々襲った。神奈川県警などによると、小学6年の栗林華子さん(11)=東京都多摩市桜ケ丘2丁目=と、外務省職員の小山智史(おやまさとし)さん(39)=東京都世田谷区桜上水5丁目=の2人が首などを刺され病院に搬送されたが、死亡が確認された。ほかに小学1~6年の児童16人と40代女性が重軽傷を負った。
死傷事件容疑者、近隣トラブルも 川崎市内に住む51歳
捜査1課によると、男は岩崎隆一容疑者(51)=川崎市麻生区多摩美1丁目。職業は調査中という。襲撃後まもなく、近くで自らの首を切りつけ死亡。傷はかなりの深さに達していたという。そばには血の付いた包丁が2本落ちていた。県警は殺人や殺人未遂の疑いで捜査しており、容疑が固まり次第、容疑者死亡のまま書類送検する方針。
岩崎容疑者は両手に刃物を持ち、小山さんを背後からいきなり刺した後、約20~30メートル離れたスクールバスのバス停付近で、栗林さんら私立カリタス小学校(川崎市多摩区)の女児16人と男児1人、女性を襲撃。スクールバスの運転手が「何をやっているんだ」と怒鳴ると立ち去り、自らを切りつけた。小山さんと女性はカリタス小に通う子どもがいて現場に居合わせたという。小山さんらの子どもにけがはなかった。
病院によると、小山さんは搬送時すでに心肺停止状態で、背中や首などに計4カ所の刺し傷があった。首の傷が致命傷になったとみられる。栗林さんも心肺停止の状態で搬送され、首に1カ所深い刺し傷が確認された。ほかの児童らは首や顔、胸などを切られたり刺されたりし、傷が複数ある人もいるが、いずれも命に別条はないという。
凶器とみられるのは刃渡り30センチの柳刃包丁2本で、現場に残された岩崎容疑者のものとみられる黒色のリュックの中から、さらに包丁2本が見つかった。この2本に血は付着していないという。県警は、岩崎容疑者が大勢の人を襲う目的で事前に準備していた可能性があるとみて、動機や当時の詳しい状況について解明を進める。
学校法人カリタス学園によると、小学校の児童数は約600人。現場から北西に直線で1キロ余りの学校まで、朝はスクールバスを8本運行しており、6本目で事件が起きたという。事件後は休校とし、児童は迎えに来た保護者らと順次下校した。
警察庁によると、自由に出入りできる場所で、明確な動機がなく、通りすがりに不特定の人を殺傷する事件は昨年中に未遂を含めて6件あり、1人が死亡し、6人がけがをした。2009年以降の10年間では62件あり、年間4~9件で推移した。死者は15人、けが人は102人だった。