プロ野球ソフトバンクに頼もしい男が帰ってきた。開幕直前の3月に自律神経失調症を患っていると公表した中村晃(29)。不動のレギュラーだったプロ12年目の外野手は31日の楽天戦で今季初めて1軍に昇格し、さっそく、7番右翼手で先発出場した。
「背番号7」が、久しぶりに本拠ヤフオクドームのグラウンドに立った。1点を追う二回、無死二塁の好機で第1打席が回ってきた。場内から割れんばかりの拍手と、「アキラー」の歓声。「大きな声援が後押ししてくれた」と、カウント1―2からの4球目。121キロの変化球を引っ張り、右翼線ぎりぎりへ同点の適時二塁打を放った。
試合前の練習中には仲間や工藤監督と談笑する姿も。守備、走塁と全てのメニューをこなし、打撃練習では柵越えも含む鋭い当たりを連発した。順調な回復ぶりをうかがわせた。
関係者によると、中村晃が悩んだ症状は不眠。試合後に「スイッチが切れない」と興奮状態が続く。眠れずに疲労が抜けない。そんな悪循環に陥っていたという。
そのため、症状を公表し、自宅で療養した後は、主に福岡県内の2軍施設で調整してきた。野球そのものは問題なくできるため、3軍戦、2軍戦に出場。試合後に休養を取れているかを確認し、1軍に復帰するタイミングを探っていた。今月22日には敵地であった2軍戦にも出場。約1週間の遠征をクリアし、復帰にこぎつけた。
チームは柳田ら離脱者が相次いでいただけに、2014年に最多安打に輝いた左打者が戻ってきたのは大きい。工藤監督は「おかえり、と声をかけた。元気でやってくれることが何より。今後もしっかりフォローしながら、(起用を)考えていきたい」と話す。
中村晃は31日の試合前、報道陣に対して「試合後に」と、ひとこと。集中を高め、自身にとっての今季初戦に臨んでいた。(藤木健)