(11日、全日本大学野球選手権1回戦 大体大3―2高知工科大)
延長十回サヨナラ負けしたものの、27代表中、唯一の公立大だった初出場の高知工科大(四国地区)が実力校を相手に大健闘した。全国的に無名だったチームの支えとなったのは、地元の風習と善意だった。
大学は高知県香美市にあり、創立は1997年。初優勝した昨秋に続き、今春のリーグ戦を制した。初めて全日本選手権への切符をつかんだが、遠征費がいくらかかるのかも分からない懐事情だった。「アルバイトをさせようかとも考えたんですが。幸いにも高知県には、甲子園出場の際などにも使われる『奉加帳』という習慣がありまして」と福田監督。
寄付者の名前と金額を記す用紙「奉加帳」を用意し、協力をお願いした。部員の帰省先に持たせた例も。監督によると、途中段階で少なくとも約1千人から数百万円の寄付が集まったといい、部員の負担はなく、大会に参加することができた。
試合はエースの4年生、尾崎の投球が素晴らしかった。徳島北高出身の右腕は球速が130キロ台そこそこでも、制球力がさえた。出場18回目で優勝経験もある大体大(阪神)を相手に九回まで四死球を与えず、被安打は2。失点は本塁打による2点と踏ん張った。
2―2のまま十回からはタイブレーク(無死一、二塁)に突入し、味方の攻撃は無得点。その裏、2死満塁までこぎつけたが、8番打者に初球の130キロを左前にはじき返され、サヨナラ負けした。尾崎は「外角狙いが甘く入ってしまった。ボール球でよかった。後悔しています」と唇をかんだ。
福田監督は「高校野球で言えば、今日は21世紀枠と古豪との対戦。本当に善戦してくれたが、志を頂いた方に結果で恩返しがしたかった」と悔しがった。まだ数日は滞在できたそうだ。(竹田竜世)