強豪私大が集う関西学生リーグに所属する京都大野球部。まもなく終わる春季リーグ戦では最下位が決まったが、2勝をあげ勝ち点獲得に迫った。秋に最下位脱出をめざすため有望新人を入部させたい。困難な条件にあるなかでのあの手この手の勧誘手法に迫った。
今年3月、京大野球部に朗報が届いた。「甲子園に出場した投手と、大阪選抜の投手が合格した」。昨春の選抜大会に21世紀枠で出場した膳所(ぜぜ、滋賀)のエースで、身長190センチの右腕手塚皓己が現役合格。大阪選抜にも選ばれたことがある北野(大阪)のエース左腕牧野斗威(とうい)が1年の浪人を経て受かった。
京大は、リーグ戦5勝をあげている藤原風太(東海大仰星)が4年生になり、後継の育成が急務だ。新入生獲得の作戦を練る「リクルート班」は、早速2人に接触。手塚と牧野を知る野球部員とともに、練習や試合観戦に誘ったり、食事をしたりしながら魅力を説いた。ただ一筋縄にはいかない。
推薦などで選手をとれる他の5大学と違い、京大は難関の入試があり、入学後も日本一経験もあるアメリカンフットボール部などと少ない有望選手を奪い合う。牧野は入学前は野球部に入るつもりでいたのに、4月下旬になっても入部届を出さなかった。アメフト部から熱烈な勧誘を受けていた。「こんなアツい人たちと日本一を目指してみたい」と、心が揺れていたのだ。ただリクルート班は、何度も会って粘り強く説得した。「京大も強くなってきた。一緒にさらに上を目指そう」――。熱意に牧野も「スポーツに熱中できるのは最後。それならやっぱり野球をやろう」と入部を決めた。
手塚は高校時代で燃え尽きていたという。そんななか、リクルート班は手塚が大のアイドル好きだという情報をキャッチ。同じ趣味の部員がいることや、アイドルのライブなどに通う「ヲタ活」と「部活」を両立できることを説いた。
さらに4月中旬、青木孝守監督が入部を迷う他の新入生とともに懇談。「高校時代に実績を残した選手が入ってくれれば、優勝を口にしても良いレベルのチームができる」と熱弁し、手塚の体験入部にこぎ着けた。そこで手塚は「想像以上にレベルの高い選手がいることを知って、『おもしろいことを起こせるかも』という気になれた」。5月の連休明けに入部届を提出した。
リクルート班の活躍もあり、新入部の投手には膳所、北野に加え、昨夏の南大阪大会で4回戦に進んだ天王寺の3校のエース経験者計6人がいる。青木監督は「このなかから先発の柱が育ってくれたら。非常に楽しみ」と期待している。
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関西学生野球リーグは立命館大、近畿大、同志社大、関西大、関西学院大の私学5校と京大が所属する。近年では辰己涼介(立命大から楽天)や東克樹(立命大からDeNA)ら、プロ球団からドラフト上位指名される選手が輩出した。京大は2001年春以降、参加チーム中最下位が定位置になっている。(高岡佐也子)