刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする香港の「逃亡犯条例」改正案への抗議活動が続いている問題で、1万人前後の若者らが21日、香港の警察本部を取り囲み、12日の衝突で拘束された学生らの釈放などを要求した。警官隊とのにらみ合いが続き、緊張が高まっている。
デモ隊は香港中心部にある警察本部前の道路を占拠。「学生を釈放せよ」「我々は暴徒ではない」などと声を張り上げた。2014年の民主化デモ「雨傘運動」の元学生リーダー、黄之鋒氏がマイクを手に警察幹部との直接対話を求めたが警察は応じていない。
警察はデモ隊に撤収するよう警告する一方、多数の警察官を配置してデモ隊の突撃を防ぐ構えだ。若者が警察の敷地内に入り、警察官と小競り合いになる場面もあった。
21日は学生団体が政府本部を包囲しようと呼びかけていたが、政府本部が朝から閉鎖されたため、デモ隊は警察本部に集結。その一部は政府に圧力をかけようと、税務当局や入管当局などが入る近くのビルに押し入るなどした。
香港メディアによると、香港全体で5千人を超える警察官が動員され、警戒を強めているという。
学生団体は、12日のデモで警官隊と衝突した若者の行動を「暴動」と表現した林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の発言の取り消しも要求している。
林鄭氏は18日、改正案が事実上、廃案になる見通しを示し事態の収拾を図った。だが、デモ隊が求める拘束された学生の釈放などの要求には応じていない。(香港=益満雄一郎)