今年、豊野(愛知県豊田市)に新たな「スタッフ」が誕生した。
動画もニュースもたっぷり! 「バーチャル高校野球」
あま市の会社員新矢(しんや)恭三さん(53)。練習試合の際、選手らを送り迎えするバスの運転手だ。
休日に片道約1時間かけて学校に向かう。運転のほか、選手のランニングに付き合ったり、選手から悩みを打ち明けられたりすることも。ボランティアでチームを支える。
新矢さんはOBでも生徒の保護者でもない。つながるきっかけは、ツイッターだった。
2人の息子が高校球児で、以前から愛知の高校野球の練習試合の結果などを積極的に投稿していた。約5年前、当時別の学校にいた松井優監督(34)がそれを見て返信。意気投合し、個人的な交流が続いた。
チームとの交流が始まったのは、2016年に松井監督が豊野の監督に就任してから。豊野は14年以降、夏の愛知大会で初戦を突破できていない。練習試合などで足を運ぶうちに、「なんとか勝たせてやりたい」と思うようになった。
バスの運転は、遠征のたびに運転手とバスをレンタルし、部員が一人約3千円を負担していると知り、「僕が運転すれば負担が減る」と発案。昨年バスが運転できる免許を取得し、年明けからハンドルを握る。4月以降、部員の負担は千円ほどになったという。
「自分たちで練習メニューなどを考え、動くチーム。素直でいい子ばかりなので応援したい」と新矢さんは言う。「夏の大会は、球場がどんなに近くてもみんなでバスに乗って行こうと約束した。最後はバスから送り出してあげたい」
部もツイッター
豊野は部の公式ツイッターも始めた。昨年2月から練習の様子や試合の報告などを発信している。
〈今日は2年生の奥村が第3号のホームランを打ちました。試合には負けてしまいましたが、冬の練習の成果が出始めています。〉
吉良との練習試合が5月25日にあり、ツイッターに試合結果と本塁打を放った奥村魁斗(かいと)君(2年)の写真が投稿された。
文章や写真はマネジャーがiPadで作成。奥村君は「投稿をみた友達からラインで『すごいね』と連絡がきた。反応があってうれしい」と笑顔をみせた。
公式ツイッターは松井監督の発案だ。「自分たちの取り組みを広く知ってもらうことで、生徒たちが自信を持てるのではないか」と思い、学校から許可を得て始めた。
部員不足の解消にも役立てたいと考える。発信を始めた頃の選手は12人。今春に入部した1年生10人のうち4人は、ツイッターで豊野の野球部の投稿を見たことがあった。そのひとり、三浦清之助君(1年)は「ホームランを打った選手の中学校名も書いてあるので、同じ中学の人に部の雰囲気を聞くことができた」と話す。
豊野のグラウンドには、ツイッターを通じてつながった社会人野球選手が指導に訪れたこともあるという。「SNS上の関係がリアルな付き合いになったり、部のことを知ってもらえたりして、交流が広がっている。今はツイッターから得られることの方が多い」と松井監督。今後も積極的に発信する予定だ。
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ツイッターなどのSNSを使ってチーム状況を伝える野球部は増えつつある。
南陽は昨年8月、野球部の活動を紹介し、入部者を増やそうとツイッターを始めた。福江や知多翔洋もツイッターで試合の結果などを発信している。
一方、ツイッターなどのSNSによるチームの情報発信を禁止する学校もある。安城南は毎年、部員や保護者に試合の対戦相手や結果といった情報をSNSなどで公表しないよう呼びかけているという。伊佐治琢磨監督(39)は、「勝つために、なるべく情報は出しません」と話す。(村上友里)