インドネシア・スマトラ島北部に、元テロリストがつくったイスラム教系の寄宿学校がある。「テロリストの子」を受け入れ、過激思想を徐々に取り除く。負の連鎖を断ち切る挑戦だ。(サウィトレジョ=野上英文)
スマトラ島北部のメダンから車で1時間。農地が広がるサウィトレジョ村にあるイスラム教系の学校「アル・ヒダヤ」を訪ねた。教室では16人が期末試験中。このうち11人は親が元テロリストだ。
試験後、生徒は寄宿舎そばの養鶏場へ。2千羽にえさをやったり卵を集めたり。敷地内の池では魚を、畑ではトウモロコシや芋を育てている。
これらは「脱過激化」「トラウマ治癒」の体験学習プログラムの一環だ。国の教育課程に加え、学校が独自に設ける。
「日本のアニメが好き」と生徒らは屈託のない笑顔を見せる。テレビは週末にそろって見る決まりで、携帯電話やネットは使えない。自ら掃除や洗濯をする。自立した生活で穏健なイスラム教を身につけさせる狙いだ。
生徒らは国家テロ対策庁などの紹介で転校してくる。テロ事件で肉親が逮捕されたり撃たれたりする姿を間近で見ており、半数は親を失っている。親から過激思想を教え込まれていて、爆弾の作り方や銃の撃ち方を訓練された子もいる。過激派が標的とする警察や国軍を憎み、国旗も嫌う。「今すぐパレスチナに行って、イスラエルと戦争したい」と話した生徒も過去にいた。
転校当初、生徒は一様に暗い表…