東証1部上場の建設会社、ライト工業(東京)の男性社員(当時30)が自殺したのは長時間労働が原因だったとして、向島労働基準監督署(東京)が労災認定した。遺族代理人の川人博弁護士らが3日、記者会見して明らかにした。労基署は1日あたり4千円超にのぼる残業代の未払いも指摘しているという。
認定は6月17日付。川人弁護士らによると、男性は2015年にライト工業に入り、山梨県や千葉県、神奈川県など関東地方の各地で進められた土木工事の監督業務を担当した。工事現場の監督を1人で任されて予算や工法に関する書類をつくり、必要な材料や機械も手配して、長時間労働が常態化していた。男性は退職の意向をほのめかしていたが、「会社が察知して先の仕事をどんどん入れて、退職をくい止めていた」(川人弁護士)という。
17年11月、男性は東京都江戸川区にある社員寮で自殺。労基署は、亡くなる直前の3カ月間は時間外労働が月101~113時間に達し、これが原因で自殺前に精神疾患になっていたと推定した。社用車を運転して工事現場を行き来する移動の時間の一部も、労働時間に含めることを認めた。この労働時間は、労使で定めた時間外労働の上限を超え、違法な状態だったという。
会見に同席した男性の父親は「本件は単なる労災を超え、人災であると、個人的には確信しています。国は、真の働き方改革の推進をしてほしいと切に願います」とのコメントを読み上げた。ライト工業は「労災認定されたことを把握しておらず、現段階ではコメントできない」(経営企画部)としている。
建設業界では長時間労働の抑制が課題になっている。ライト工業の男性が亡くなる4カ月前の17年夏には、東京五輪・パラリンピックで使われる新国立競技場(東京)の建設工事をめぐり、大成建設などの共同企業体の下請け会社で現場監督をしていた男性(当時23)が自殺していたことが判明。再発防止に向けて建設業界団体は、残業時間の自主規制にとりくむと表明していた。この自殺は同年10月に労災認定されている。(内藤尚志)