第101回全国高校野球選手権佐賀大会(朝日新聞社、佐賀県高野連主催)の6試合が9日、佐賀市のみどりの森県営球場とブルースタジアムであり、佐賀商、北陵、東明館のシード校が勝ち進んだ。10日も6試合がある。
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生徒会長「最後の校歌」歌えず涙 杵島商・黒木大旗君
試合が終わり、勝った佐賀商の校歌が聞こえてきた。「自分だったらもっと大きな声で歌うのに……」。杵島商の中堅手、黒木大旗(だいき)君(3年)は整列したベンチの前から、悔しそうに見つめていた。
杵島商は昨年、白石と再編統合。杵島商としては今夏、3年生だけのチームで出場した。
黒木君は生徒会長。佐賀農で野球をしていて、生徒会長だった兄の裕太さん(27)がお手本だ。
とはいえ生徒会活動は週2、3回あり、野球と両立できるか不安だった。真崎貴史監督から言われたのは「どっちの活動も応援する。しっかりメリハリをつけていけ」だった。
そこで、月曜の野球用具を手入れする時間や昼休みを生徒会活動に充て、資料を作ったり、ボランティアの企画を考えたりした。生徒会の仲間も事情を察して、快く仕事を引き受けてくれた。野球部では片付けを率先し、時間を効率的に使うよう努めた。
佐賀商の校歌が終わった。黒木君たちはスタンドに向かう。応援してくれた人たちに頭を下げた後、しばらく地面にしゃがみ込んで立てなかった。杵島商としては最後となる校歌を、一緒に合唱できなかった悔しさでいっぱいだった。
「上を向いて、胸を張れ」。真崎監督から肩を抱かれ、ベンチに戻った。袖で涙を拭い、裏に先回りして、いつものように率先して後片付けを始めた。(松岡大将)