NECの新野隆社長は10日、朝日新聞などの取材に応じ、優秀な研究者獲得に向けて若手の報酬の上限を設けない新制度を導入する方針を示した。他社との競合が激しい人工知能(AI)技術やサイバーセキュリティーなどの分野を強化するため、「グローバルで通用する募集体系をめざす」という。
新たな高額報酬制度は10月から導入する。AI技術などの研究を担う中央研究所の若手研究者20人程度が対象。新卒や中途採用、在職中も含め、学会での論文発表といった実績が評価されれば、賞与の上限をなくす。20~30代の若手も年収1千万円超になることもあるという。新野氏は「海外の報酬は高額だが、国内では必ずしもそうではなかった」とし、高額報酬の可能性を打ち出すことで「(人材の)獲得も流出防止もマネージ(管理)していく」と話した。
また、次世代通信規格「5G」サービスでは、基地局を手がけるNECにとって需要取り込みの機会となる。米中通商摩擦の影響で、基地局向け機器で高シェアの中国・華為技術(ファーウェイ)を排除する動きがあるが、新野氏は「(基地局事業で)我々にもチャンスがあるかもしれないが、それよりも米中摩擦の影響が長引いて全体的に景気が下ぶれるリスクの方が心配だ」との見方を示した。
基地局にも使われる半導体をめぐっては、日本政府の半導体関連素材の対韓輸出規制強化により韓国半導体メーカーへの影響が懸念されている。新野氏は「韓国からいろんな半導体を買っているが、具体的にどんな影響があるかは想定できない」と述べるにとどめた。