競技場の400メートルトラック内側の芝生の上には売店があり、ビールを飲みながら、桐生祥秀(日本生命)ら日本のトップ選手がすぐ目の前を走る姿に声援を送る――。陸上ファンにとっては「夏の夜の夢」のような新しいスタイルのナイター陸上競技大会が8月17日、福井市で開催される。日本初の試みがいくつもあるこの企画には、福井に関わる陸上関係者の思いが詰まっている。
大会名は「アスリート・ナイト・ゲームズ・イン福井」だが、サブタイトルに「FUKUI 9・98CUP」とある。会場は日本人で初めて桐生が男子100メートルで10秒の壁を破った福井県営陸上競技場。昨年5月には「9・98スタジアム」という愛称がついた。
2年前の9月9日、日本学生対校選手権に詰めかけた約1万人の観衆は、目の当たりにした初の9秒台に熱狂し、興奮した。「陸上競技で、こんなに人を喜ばせることができるのかと思った」と福井陸上競技協会(福井陸協)の木原靖之専務理事。もう一度、あのスタジアムの雰囲気をつくれないかと思っていた。
そこに2人の選手から雑談混じりの提案があった。昨秋の福井国体のころ、福井県スポーツ協会所属だった男子110メートル障害日本記録保持者の金井大旺(現ミズノ)と800メートルの村島匠が「欧州みたいに観客と一体となって盛り上がるナイター競技会があれば……」と木原専務理事に話した。
金井の頭にあったのは昨年7月、欧州で出場したベルギーの「ナイト・オブ・アスレチックス」だった。「堅苦しくなくて、アナウンスも乗りがいいし、音楽もガンガン鳴らして」と金井は話す。2年前の再現ができるかもしれない。開催に向けた動きが始まった。
クラウドファンディングで資金集め
トップ選手が来なければ試合は盛り上がらない。先立つものはお金。クラウドファンディング(CF)を活用するアイデアはすぐ出てきた。日本陸連公認の競技会開催にCFを活用するのは国内初の試みだ。
5月10日に募集を始めて最初…