高校野球愛知大会は大会6日目の13日、9球場で2回戦25試合があり、春の選抜大会覇者の東邦が星城に八回コールドで敗れた。25試合のうち、1点差決着が8試合、2点差決着が4試合と紙一重の勝負が続いた。
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「平常心」日常から鍛えた 星城・石黒佑弥投手(3年)
3点をリードした七回裏1死一、二塁。打席に立った星城のエース石黒佑弥君(3年)は、「考えすぎると打てない。きた球を振る」と2球目の外角寄りの浮いた変化球を振り切った。打球は中堅手の頭上を越え、スタンドへ。相手を引き離す3点本塁打となった。守備では、東邦打線を8安打に抑える力投。東邦の石川昂弥(たかや)主将は「インコースとアウトコースをうまく投げ分けていた」と評する。
中学校では軟式野球部に所属し、中学2年から投手になった。ピンチの場面で平常心を保てないことが課題だった。1年生大会の中京大中京戦では投手として出場し、九回で逆転されて4―5で敗れた。昨夏の西愛知大会では愛工大名電戦に先発投手で出場し、10―11で敗退。「ピンチの場面で舞い上がってしまい、余裕が持てなくなる。このままじゃだめだ」。相手の行動を観察したり、ごみを拾ったり日常生活から冷静に周りを見ることを心がけた。
新チームでエースになり、キレのある直球を磨いて最速146キロを記録。昨年末には愛知県の選抜チームの選手に選ばれ、オーストラリア遠征に参加した。「自分よりうまい選手がたくさんいて、他の選手の投球フォームなどを見比べて良いところを吸収した」
2回戦の相手は、今春の選抜大会を制した東邦。「自分たちの力がどこまで通用するか楽しみ」と臨んだこの日、三回に連打や適時二塁打などで3点を先行されたが、平常心を失わなかった。「落ち着いて直球に変化球をまぜて、テンポ良く投げられた」。すぐに次の試合に向けて「浮足立たずに自分ができることをやって勝っていきたい」と気を引き締めていた。(村上友里)
完投、敗れてもエースらしく た津島東・平野聖海君(3年)
「大丈夫です。まだまだいけます」
九回、投球が100球を超えた津島東の平野聖海(せかい)君(3年)は、岩瀬幹弘監督に力強く返事をした。岩瀬監督は「まだ投げられるか」と聞いたものの、体の痛みを訴えない限りは降板させる気はなかった。「平野は絶対的なエース。最後まで投げきるはず」
身長163センチ。小柄な平野君はこの日、変化球主体の打たせてとるピッチングを心がけた。名城大付は直球主体だった初戦の投球を見ているだろうと予想し、変化球主体に変えた。勝ち抜くために身につけた投球術だった。狙い通り二回以降スコアボードにゼロを並べた。
十回表、1点を勝ち越され、なおピンチが続く。マウンドに駆け寄ってきた捕手の宮田遥世(ようせい)君(2年)に平野君は「切り替えよう」と声をかけた。笑顔で野手陣を見渡す。「ピンチでは捕手も野手も緊張している。仲間に励まされるよりも、仲間を励ますのがエース」
129球、平野君は十回を完投した。試合は敗れたが、「楽しかった。マウンドは特別な場所でした。投げ切れて最高です」。最後までエースらしく、自信に満ちた表情でマウンドを降りた。(佐々木洋輔)