♪でんでらりゅうば でてくるばってん でんでられんけん でーてこんけん……
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「でんでらりゅうば」は、長崎で昔から歌い継がれてきたわらべ歌。創成館(長崎県諫早市貝津町)では、野球の吹奏楽応援曲の定番だ。
奥田修史(なおふみ)校長(47)によると、初めて応援に採り入れたのは、同校が甲子園に初出場した2015年の第97回全国高校野球選手権大会の時だ。「全国にいる長崎出身の人に『長崎の学校だ』と気付いてもらい、一緒に応援してほしい」と考え、吹奏楽部と相談してレパートリーに加えた。
以来、甲子園に進んだ時だけでなく、長崎大会でも演奏してきた。
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吹奏楽部長の三重蒼衣(あおい)さん(3年、フルート)は、昨春の甲子園の選抜大会と、昨夏の長崎大会決勝のスタンドで応援演奏をしたメンバーだ。「私たちの全力の演奏に周りの人も合わせてくれて、応援を引っ張っている感じがした」と振り返る。特に県民になじみ深い「でんでらりゅうば」は「一緒に歌ってくれる人も多く、盛り上がるのでうれしかったです」。
加藤健吾君(2年、テューバ)は、姉の影響で中学から吹奏楽を始めたが、幼い頃、プロ野球に憧れて野球をしていた経験もある。昨夏に初めてスタンド応援を経験し、「大好きな野球の応援ができて楽しかった」という。
吹奏楽部は夏場にコンクールなどの行事が集中し、野球応援の日程を組むのが難しい。昨夏の甲子園は、全国高校総合文化祭と日程が重なって応援に出向けず、他校の吹奏楽部に「助っ人」を頼まざるを得なかった。
三重さんは「大変だけど、やっぱり甲子園の熱気はひと味違う。今年は応援に行きたいです」。加藤君は「甲子園は、野球をしていた自分にとっても夢の舞台。自分たちの演奏が選手たちの力になれたら」と、ともにアルプススタンドでの応援に思いをはせる。
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『ブラバン甲子園大研究』(文春文庫)を執筆したライターの梅津有希子さん(43)は、同書で創成館の「でんでらりゅうば」に触れている。地元のわらべ歌や民謡を演奏する学校は全国的にも少ないといい、「郷土色を感じられる応援は、地元の人にはうれしいもの。スローテンポな民謡を応援用にうまくアレンジしている」と指摘する。
梅津さんも高校時代は吹奏楽部だった。母校の野球部は強くなく、野球の応援は無縁だと感じていたが、今では応援を見るために球場に足を運ぶ。
「応援の一体感は、吹奏楽があってこそ生まれる」という梅津さん。スタンドの熱狂が選手の力を引き出す。「応援で試合の流れが変わった、と思う瞬間もたくさんあった。応援に注目すると、高校野球の新たな魅力が見えてきますよ」(弓長理佳)