春節(旧正月、今年は1月25日)の連休が延長され、企業の業務再開が遅れたなどの要因が積み重なり、工業経済は非常に大きな打撃を受けている。今年第1四半期(1-3月)の中国経済産業景気指数は92.2で(2015年の成長水準を100とする)、昨年第4四半期(10-12月)より9.6ポイント(p)低下し、低下幅は比較的大きかった。また工業経済に関わる主要指標も軒並み大幅に低下した。(文:呂慶■(吉へんに吉)・国家統計局中国経済景気モニタリングセンター副センター長。「経済日報」に掲載)
一方で、工業の生産とニーズがどちらも目に見えて減少した。突如発生した新型コロナウイルスの影響により、企業の正常な生産活動が大幅に減少し、これに物流の停滞が加わって、工業の半製品の供給が断絶し、生産サイドは大きな打撃を受けた。第1四半期の一定規模以上の工業企業(年売上高2000万元以上の企業)の付加価値額は前年同期比8.4%減少したのに対して、前年同期は6.5%増加した。全国の工業生産能力利用率は67.3%で、同8.6p低下した。同時に、海外企業からの受注がキャンセル、減少、延期された影響で、工業ニーズが大幅に減少した。1-2月の一定規模以上の工業企業の売上高は同17.7%減少したのに対して、前年同期は3.3%増加した。第1四半期の製造業購買担当者景気指数(PMI)のうち新規受注指数の中央値は44.2%、新規輸出受注指数の中央値は41.3%で、景気不景気のボーダーとなる50%を大きく下回った。また一方で、工業企業の利益が目に見えて減少した。生産販売の落ち込みと防疫コストの増大の挟み撃ちで、企業の利益が目に見えて減少した。1-2月の一定規模以上の工業企業の利益総額は同38.3%減少し、41の工業大分類のうち37分類は利益が減少し、工業企業の経営が、とりわけ中小工業企業の経営が困難に陥った。
新型肺炎は工業経済に目に見えるネガティブな打撃を与えたが、対策が実際に効果を上げるにつれ、企業の生産再開は足並みをそろえて秩序よく推進されており、工業経済はこれから正常な水準を急速に回復し、通年の経済に与える感染症の影響はコントロールが可能と予想される。その根拠として次の4点が挙げられる。
第1に、過去のデータをみると、第1四半期のデータが通年データに与える影響は大きくない。春節前後の20日間前後は、企業の生産がそれほど活発ではなくなるので、第1四半期の工業付加価値額が通年付加価値額に占める割合は大きくなく、第2四半期以降に補填するチャンスがたくさんある。第1四半期の工業付加価値額が通年に占める割合は20%前後で、通年の付加価値額への打撃はコントロール可能だ。
第2に、中国工業経済には強い強靱性と自己修復能力がある。中国には整った工業システム、強大な産業配置能力、十分な労働力、厚みのある人的資本の蓄積がある。同時に、中国には14億人の人口を擁する巨大な市場があり、消費能力と消費のポテンシャルは非常に高く、中国の工業経済が十分な強靱さを備え、高い弾力性をもち、強い自己修復能力を有し、短期的な打撃に耐え抜いた後で急速に回復することを可能にする。41の工業大分類をみると、3月には37分類の生産が1-2月より加速したか、低下幅が縮小し、16分類の付加価値額が前年同期より増加した。主要工業製品をみると、約40%は生産量が前年同期より増加した。