○イタリア3-0ウクライナ●
◇イタリアFW、トニ(29歳)
イタリア1部リーグ(セリエA)の得点王が、ようやく目覚めた。
後半14分、ゴール前でDFの前に体を入れてトッティの浮き球に頭で合わせ、W杯初ゴールを記録した。その10分後には左サイドを突破したザンブロッタの折り返しを左足で押し込んだ。
「厳しい批評に落ち込むこともあった。この2発は、最後まで自分の力を信じてくれたファンに捧げたい」。194センチの長身ストライカーは声を弾ませた。
遅咲きのスターだ。得意の空中戦、ポストプレーだけでなく、足元も磨くことで才能を花開かせた。代表デビューは2年前の夏、27歳の時。今季、フィオレンティナで31ゴールをマークし、セリエAでは47季ぶりとなる30得点の大台に乗せた。
気の早いイタリアメディアは、優勝した24年前の82年スペイン大会で救世主的な役割を果たしたロッシと重ね合わせた。ロッシも当初は不振に苦しみながら、5戦目のブラジル戦でハットトリックを記録したのをきっかけに上昇気流に乗り、計6ゴールを挙げて得点王にも輝いている。
当の本人も「ロッシみたいだって? それは分からないけど、比較されて気分はいいね。自分でも彼みたいになれればうれしい」とまんざらでもなさそうだ。
守備偏重といわれるイタリアが、W杯で3点を奪ったのは、3-0で勝った98年フランス大会1次リーグ第2戦のカメルーン戦以来。決勝トーナメントとなると、82年大会決勝で西ドイツを3-1で破って以来となる。イタリアは自信を回復し、準決勝のドイツ戦に臨む。【安間徹】
毎日新聞 2006年7月1日