王子製紙による北越製紙の株式公開買い付け(TOB)をめぐり、大王製紙が「両社が経営統合すれば、独占禁止法違反になる」とクレームをつけた背景には、王子・北越の価格決定力が増すことへの危機感がある。ティッシュペーパーの箱などに使われる白板紙の市場シェアは、王子と北越の合算で約6割。大王製紙は白板紙は生産せず、購入してティッシュペーパー「エリエール」を生産、販売しており、白板紙の価格が上がれば、経営に打撃になるからだ。
白板紙は、王子・北越を除くと、日本製紙やレンゴーなど、限られたメーカーしか生産していない。大王の幹部は、「他のメーカーに生産余力はなく、代替品もない。当社だけではなく、白板紙を使う中小メーカーはもっと打撃だ」と危機感を示す。
大王は、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなど、「家庭紙」と呼ばれる分野で業界最大手。同社の収益の柱だが、ティッシュペーパーは低価格競争が激しく、箱の原料の白板紙の値段は無視できない。
原油高の影響を受けて、今年5月に白板紙は約10~15%値上げされており、経営環境は険しさを増している。大王は「規模拡大が製紙業界の競争力強化につながるという王子製紙の主張は間違っている」と強く反発している。【小原綾子】
毎日新聞 2006年8月2日