王子製紙による北越製紙への敵対的TOB(株式の公開買い付け)は、北越が2日の取締役会で買収防衛策発動の手続きに入ったことで「全面対決」の火ぶたが切って落とされた。王子が北越株の過半数を集められるか、北越が阻止できるのか。北越の防衛策が実際に発動されるかどうかが当面の焦点だが、発動できない場合も北越は王子のTOBに応じないよう株主に訴える安定株主対策に全力を挙げる方針で徹底抗戦の構えだ。今後の攻防のポイントを探った。
◆防衛策
北越の防衛策発動の是非を検討する「独立委員会」の判断が最初の焦点。独立委が王子提案を「敵対的」と判断すれば防衛策が発動されるが、M&A(企業の合併・買収)に詳しい関係者は「北越の説明では王子との統合がなぜ北越の企業価値を損なうか分からない。そこを数字で説明しないと敵対的とは断定できず発動は難しい」とみる。
これに対し、北越は三菱商事との提携などによる企業価値向上策の策定を進めている、三菱商事を引受先とした増資が完了する7日以降、数値を示して相乗効果などを説明、防衛策発動に向けた地ならしとしたい考え。
◆差し止め請求
北越の防衛策が発動されれば、王子にとってはTOBの目標とする過半数の北越株取得の逆風になる。このため、王子は新株予約権の発行差し止めを求める仮処分申請に踏み切る構えで、対立は司法の場に突入する。この場合、王子が経営統合を水面下で提案した後に北越が防衛策を導入した経緯が、“後出し”の防衛策と判断されるかが司法判断のカギになる。
差し止めが認められれば王子はTOBを継続できるが、却下された場合は北越株の発行数が大きく膨らむだけに目標とする過半数取得は難しくなり、TOBの条件を変更するか、買収を断念するかの選択を迫られる。
◆株主争奪戦
最終的には、どれだけの株主が王子のTOBに応募するかが雌雄を決することになるだけに、北越の大株主に対する王子と北越双方の働きかけが激化しそうだ。
また、みずほ証券の高橋光佳アナリストは「今後の北越の株価動向も大きな要因」と指摘する。北越株の2日の終値は王子のTOB価格を上回る814円だったが、この株高が続けば株主はTOBに応じるより市場で売却した方が得なのでTOBへの応募は少なくなる。その場合は、王子がTOB価格を引き上げるなど条件変更に踏み切る可能性もある。【上田宏明】
毎日新聞 2006年8月2日