王子製紙は2日、北越製紙株の過半数取得を目指す敵対的TOB(株式公開買い付け)を開始した。これに対し、北越は同日の臨時取締役会で王子によるTOBへの反対を決議、中立的な立場の「独立委員会」に買収防衛策発動の検討を諮問した。同委が王子の買収提案を「敵対的」と判断すれば北越は防衛策を発動するが、王子は裁判所に防衛策発動の差し止めを求める法的措置を検討している。国内大手企業による初の敵対的買収は、法廷闘争に突入する可能性が高まった。
北越の取締役会は、7日に予定している三菱商事への第三者割当増資を実施することを確認。既存の全株主に無償で新株予約権を割り当て、買収者(今回のケースでは王子)の持ち株比率を大幅に低下させる買収防衛策の発動の是非について、社外監査役ら3人で構成する独立委に諮問することを決めた。
また、北越は王子のTOBに反対する声明も発表し、王子との経営統合について「王子にとっての一方的な利益」と批判。「業界トップの高い生産性を有する当社と非効率な設備を抱える王子との経営統合が、北越の企業価値にいかなる利益を与えるのか十分説明されていない」と表明した。
王子は、水面下で経営統合を提案していたさなかに北越が防衛策を導入したことから、「北越の防衛策は経営者が自己保身を図る目的で許されない」と反発しており、防衛策が発動されれば差し止め請求に踏み切る方針。
一方、製紙業界3位の大王製紙は2日、王子と北越の統合について「独占禁止法に違反し競争が制限される」との上申書を今月中にも公正取引委員会に提出することを明らかにした。王子と北越の統合で大王も大きな影響を受ける可能性が高いためとみられ、「統合後の新会社はティッシュの箱などに使う白板紙のシェアが約6割になる」などと指摘。公取委に見解を求める方針だ。【上田宏明、小原綾子】
毎日新聞 2006年8月2日