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改めてあきれるばかりだ。弁護士による検討委員会が調査結果を公表した岐阜県庁の裏金問題である。92~03年度の12年間に作られた裏金の総額は約17億円。文字通り、組織ぐるみの隠ぺい工作が長年続いてきた。検討委が指摘したように、特に隠ぺい工作を容認してきた梶原拓前知事の責任は重大である。
「税金を不正使用すれば犯罪に該当することを認識させるために職員に対する倫理研修を強化する必要がある」 検討委が調査結果に併せて発表した提言にはこうある。「飲酒運転は犯罪」というのと同様、子供に言って聞かせるような話だ。岐阜県庁の職員は一体どんな顔で聞いたことだろう。 調査やこれまでの報道が指摘している点を列挙してみる。 (1)梶原氏が出張する際のホテル代が県の旅費条例を上回った際には裏金が不足分に充てられた。 (2)96年度、梶原氏が裏金を総点検しようとしたが、当時の副知事が「知事のためにホテル代のねん出に苦労してきた職員から批判が出る」と進言。梶原氏も従い、推移を見守ることにした。 (3)不正をチェックすべき県の監査委員事務局にも裏金があり、保管に困った事務局の発案で320万円を幹部8人で分配した。 (4)カラ出張などのほか、県の施設内で栽培した農産物の販売収入も裏金にしていた。 (5)会計検査院から「不明朗経理」と指摘され、県が処分した職員に対し、県職員組合にプールされていた裏金から「生活資金」が支給された。それは「なぜ自分たちだけが処分されるのか」との不満を封じるためだった……。 焦点の一つだった「裏金を焼却した」との問題に関しては、当初の「100万円を焼いた」という証言を覆し、「上司の交際費やソフトボール大会などに充てた」と告白した職員もいるという。 いずれも、そこには「住民が納めた税金」という意識のかけらもない。今後、同県はさらに真相解明を進める一方、退職者を含め、裏金の返還を求めるのは当然だ。また、捜査当局も厳正に刑事処分を検討すべきである。 ただ、現時点で明白なのは、梶原氏がいったん思い立ったという「裏金の総点検」を実行していたら、その時点で「隠ぺいの連鎖」は途切れた可能性が大きいということだ。梶原氏はホテル代について「自分のカードで払った」と否定しているというが、検討委も一連の梶原氏の証言の信ぴょう性には疑問を抱いている。 ところが、当の梶原氏は先週末の調査結果公表後、予定していた記者会見を4日になってキャンセルし、県の資金返還方針などが発表された後に会見に応じると報道陣に通告してきた。 梶原氏と言えば、全国知事会の会長を務め、「戦う知事会」を標ぼうしてきた人物だ。これでは「改革派」の名がすたる。まず逃げることなく早急に正直に語ることだ。でなければ、信頼は灰となって消えたままである。 毎日新聞 2006年9月5日 |
社説:岐阜の裏金 なぜ梶原前知事は語らない
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