岐阜県庁の裏金問題で、梶原拓前知事が県職員組合の貸付制度を利用して借りた裁判費用のうち、敗訴・和解が確定して梶原氏個人の負担となった約558万円について組合から「無期限の猶予」を取り付け、全く返還していないことが分かった。未返済期間は最長で4年に達するとみられる。同制度の原資には組合に集約された裏金の一部が混入していたことが既に判明している。
梶原氏はこれまで記者会見の要請への対応を二転三転させていたが、8日午後、岐阜市内で会見する。
プール資金問題検討委員会の報告や組合によると、同制度は97年度に始まり、組合員と寄付者が利用できる。当時毎月給与の1.1%を組合に寄付していた梶原氏も利用できた。
梶原氏は98~04年、組合の「職務関連訴訟等費用貸付規程」に基づき、24回にわたって約1053万円の貸し付けを受けた。裁判で勝訴が確定した場合は、議会の議決を経て裁判費用が県費から出るため、勝訴分約325万円は県費で返還した。だが和解・敗訴が確定した訴訟の費用約558万円は全く返還していないことが検討委の調査で判明、検討委は1日の提言で早急に返還するよう求めたが、7日現在で返還されていない。残る170万円分は係争中。
同規程によると、敗訴・和解が確定した場合は判決確定の翌日に一括返済しなければならない。だが、組合中央執行委員会の決定があれば返済が延期される特例もあり、梶原氏も当時の執行委の決定で無期限に返済を猶予されていた。また組合に申請すれば返済の免除が認められる場合もあるが、梶原氏は申請していなかった。
県によると、02年9月の地方自治法改正以前は、職員個人が住民訴訟で訴えられ、敗訴・和解した場合は訴訟費用は個人負担だった。同制度はこうした負担を軽減するため出来たが、原資の一部に裏金を使っていた。
梶原氏は先月8日の会見で「貸し付けに裏金は入っていない」と強調したが、検討委は貸付金には裏金も含まれていたと認定した。【秋山信一】
毎日新聞 2006年9月8日