インターネットバンキング利用者のIDやパスワードを盗み、預貯金を不正送金する事件の被害額が2014年、約29億1千万円に上り、過去最悪だった13年から倍増したことが12日、警察庁のまとめで分かった。1度に多額の送金ができる法人口座の被害が増え、地銀など地方の金融機関を狙った犯行も急増した。
ネットバンキングに絡む不正送金を巡っては、各金融機関が悪用された履歴のある口座の凍結を実施している。
警察庁によると、不正送金の被害は、13年の1315件、約14億600万円から1876件、約29億1千万円になった。1件当たりの被害額は約155万円。法人口座の被害は約10億8800万円で、約9800万円だった13年の11倍余りに膨らんだ。
被害に遭った金融機関も前年の32から102に拡大。地銀は20行から64行に増加し、ゼロだった信用金庫と信用組合も22機関に増えた。
法人口座の被害のうち、地方の金融機関は、約8億3700万円と全体の約8割を占め、大手銀とネット銀、信託銀などは約2億5100万円だった。個人口座と合わせ、被害を受けた預金者らの居住地は全都道府県に及んでいる。
警察庁は、法人口座が標的となっている理由を「取引金額が大きく、(犯人側が)効率的に現金を引き出そうとしている」と分析。地方の金融機関の被害が急増している点については「利用者のセキュリティー対策が進んでいないのではないか」とみている。