カナダのブラックベリーは、厳しい競争が続く市場で競争力を取り戻す試みとして、スマートフォン(スマホ)の新モデル4機種のうち1機種をトレードマークのQWERTYキーボードを搭載しないフルタッチ式のモデルとした。
5型画面を搭載した「BlackBerry Leap」の色はグレーとブラックがある。4月に275ドルで発売予定で、600ドルを超える価格に設定された韓国サムスン電子の最新版のGalaxyや米アップルの「iPhone(アイフォーン)」と競合する。
見本市MWCで披露された「BlackBerry Leap」スマホ(3日、バルセロナ)=ロイター
今年4機種を投入するという決定は、ソフトウエアやサービス事業の販売割合拡大を目指しながらも売り上げのおよそ4分の3を占めるデバイス事業を引き続き重視する同社の姿勢を浮き彫りにしている。
2008年のピーク時には、スマホ販売の5台に1台は同社の製品であり、現在は50億ドル弱の時価総額も800億ドルだった。その後、アップルやサムスンをはじめ、中国の小米(シャオミ)などアジアの廉価な端末メーカーとの競争が激化したことから多額の損失を計上し、市場シェアは1%未満に落ち込んだ。
一部のアナリストは、新モデルの投入によりブラックベリーに顧客が戻るかについて懐疑的だ。CCSインサイトのアナリストであるベン・ウッド氏は、BlackBerry Leapと「アップルのiOSやアンドロイドのデバイスとの競争は厳しくなる」と言い、「よりバランスのとれたラインアップが不可欠だった」と語った。同氏は「ブラックベリーは引き続きデバイス事業からの収入に頼っていることから、携帯端末の新モデルや後継モデルを投入し続けなければならない」と言う。
ブラックベリーのジョン・チェン最高経営責任者(CEO)は3日、小売価格がわずか100~150ドルに設定されたスマホを製造するアジアのメーカーからヒントを得たと語った。しかし、チェン氏は同社のエンジニアが同じ価格帯で満足できるスマホを開発できなかったという。
■今後もQWERTYキーボード重視
チェン氏によると、同社は引き続きQWERTYキーボードを重視するが、「一定の市場区分を対象としたタッチパネル搭載モデルの製造を中止することを意味するものではない」という。ブラックベリーは今年、QWERTYキーボードを搭載した新モデルの他、高級モデル、タッチパネル搭載モデルをもう1機種、それとスライドキーボードと「デュアルカーブディスプレー」を備えたモデルを投入する。
携帯業界の年次見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」での新モデルの発表で、チェン氏は「概して、当社はQWERTYキーボードを重視しており、研究チームの大半がその開発にあたっている」と語った。
市場予測を行う米IDCによると、スマホの国際市場におけるブラックベリーのシェアは0.5%だという。米調査会社のストラテジー・アナリティクスによると、ブラックベリーの2014年10月~12月までの3カ月間のシェアは、全世界のスマホ収入から見て数字的には意味のあるものではないという。
チェン氏は、スマホ業界の草分け的な同社に16カ月前に加わって以降、その再建を図っている。
By David Crow
(2015年3月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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