【ドバイ=久門武史】サウジアラビアは26日、内戦の危機に陥った隣国イエメンで、イスラム教シーア派系の武装組織「フーシ」に対する軍事作戦を開始した。イエメンではフーシが政権掌握を一方的に宣言して攻勢を強め、首都を逃れたハディ暫定大統領側が軍事介入を要請していた。スンニ派諸国による介入の背景にはシーア派の大国イランとの確執があり、中東地域全体の緊張が高まっている。
25日、ワシントンでの記者会見で、空爆実施を明らかにする駐米サウジ大使(左)=ロイター
駐米サウジ大使がワシントンで記者会見し、米東部時間25日午後7時(日本時間26日午前8時)に空爆を始めたと明らかにした。大使は10カ国による共同作戦だと述べ「イエメンの正統な政権を守るためだ」と強調。米軍は参加していないと説明した。ロイター通信は米政府当局者の話として、米軍が作戦を支援していると報じた。
サウジ、カタール、クウェート、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)の湾岸5カ国は「ハディ大統領の要請に応え、イエメンを守る決断をした」とする共同声明を発表した。エジプトの中東通信は、同国が作戦を政治的、軍事的に支援していると伝えた。
イエメン北部を拠点とするフーシは昨年9月に首都サヌアに侵攻し、今年2月に政権掌握を宣言。ハディ氏は南部アデンに逃れ「クーデター」だと批判したが、フーシは南部に進撃し25日、アデン郊外まで迫っていた。米国務省は25日、ハディ氏がアデンの公邸から退避したとの認識を示した。同氏の所在は不明だ。
サウジはフーシの攻勢の背後にイランの支援があると疑っている。サウジなどスンニ派のアラブ諸国は、イランの影響力拡大を警戒。サウジのサウド外相は23日、フーシの攻勢について「この問題が平和的に解決されなければ、侵略から守るために必要な措置をとる」と警告していた。
サウジがシーア派台頭を恐れて他国に介入したのは、2011年の中東の民主化要求運動「アラブの春」の際、隣国バーレーンで反政府運動が活発化したのを受け、同国政府支援のため軍を派遣して以来となる。