【バンコク=小谷洋司】タイのプラユット暫定首相は3日夜、戒厳令の解除後初めて国民向けにテレビ演説した。戒厳令に代えて暫定憲法44条に基づく強力な治安権限を握ったことについて「人権侵害や裁判所を超越する権力を伴うものではない。平和を保つためだ」と主張、国内外から出ている強権批判に反論した。
暫定憲法はプラユット暫定首相が兼務する国家平和秩序評議会(NCPO)議長が国の安全保障などが脅かされると判断した場合、同議長は「いかなる命令も出せる」と規定している。軍は令状なしの身柄拘束や家宅捜索が可能になる。
プラユット暫定首相は「権力を正しく可能な限り最善の方法で使う。政府自身の利益より国全体の利益を優先する」と強調。新たな権限によって「政府の業務遂行が妨げられないようになる」とも話し、暫定憲法44条の適用に理解を求めた。
治安維持以外の課題解決にもこの権限を広く用いる考えも表明した。まず国際機関から安全審査体制の不備が指摘された航空行政の改革を急ぐ。プラユット暫定首相は治安維持と行政の迅速化への意欲を強調したが、強権批判がやむかどうかは予断を許さない。