【ジャカルタ=渡辺禎央】インドネシア当局は29日未明(日本時間同)、オーストラリア人など7人の外国人を含む麻薬犯8人の死刑を執行した。最高検察庁報道官が明らかにした。豪州など死刑廃止国は恩赦を強く求めていたが、麻薬犯への極刑を自国の「主権」として堅持するジョコ大統領は恩赦を認めなかった。関係国との外交が冷え込む可能性がある。
司法当局によると処刑対象の外国人は豪州、ブラジル、ガーナ、ナイジェリアの出身。28日時点でフィリピン人も1人いたが、いったん中止した。さらなる法的な手続きが必要と判断されたもようだ。
2014年10月に発足したジョコ政権下での死刑は2度目。1月に外国人5人を含む6人を処刑し、自国民がいたブラジルとオランダ政府は抗議のため駐インドネシア大使を召還した。
インドネシアでは若者らの間で麻薬のまん延が問題化している。ジョコ大統領は「非常事態」との認識を示し、麻薬の密輸や流通に関わる犯罪を厳しく処罰する構え。
地元調査機関インド・バロメーターが3月後半に全国で実施した世論調査では、85%が麻薬犯の死刑を支持している。
今回は国連の潘基文(バン・キムン)事務総長が報道官声明を通じ執行の猶予を求めたほか、28日夜も豪州と欧州連合(EU)、フランスが中止を求める共同声明を発表するなど、ぎりぎりの呼びかけが続いていた。