埼玉県警鉄道警察隊が、特殊なインクを痴漢に付ける「チカン抑止シール」を配っている。きっかけは「恥ずかしくて声を出せない」という女性たちの思いだが、街やインターネットでは「冤罪(えんざい)を生む」と批判も。賛否両論がある中、学校や企業から注文が相次いでいるという。
シールは丸形で直径約2.5センチ。表面には県警のマスコットと「さわらないで!」という文字が描かれている。スマートフォン(スマホ)などに貼ったシールを見せても続く時は、落ちにくい特殊インクの出番。シールの表面を剥がすと赤の「×」印が出現する。スタンプのようにスマホごと痴漢の手に押し当てて転写し、証拠を残す仕組みだ。
1月に導入を決め4千枚を用意。JR大宮駅(さいたま市)にある同隊で無料配布を始めると、掲示板サイトで「犯人と間違えられたら怖い」など話題が沸騰。一方、同隊には「声を出さず撃退できそう」と女子高校生や学校からの問い合わせが相次ぎ、約3カ月で全て配り終えた。さらに5千枚を準備している。
捜査で実際に使われたケースはまだないが、印だけで容疑者を特定せず他の証拠や供述を積み重ねる方針だ。元東京高裁判事の秋山賢三弁護士は「県警は女性に十分説明し、慎重に使うことが大切だ」と指摘している。
〔共同〕